10月29日 7:30~12:30 高度順化
《三浦豪太さん遠征日記より》
ロブチェイースト、ハイキャンプに向かっている最中、父に二回の不整脈を記録した。父の不整脈は急に心拍数が上がる心房頻拍といわれているもので、これまで心拍数が1分間に110回程度だったのものが急に150~160回になる。こうなると急激に心拍数が上がってしまい心臓が空打ち(空回り)し、体に十分に血流量を送ることができなくなってしまう。発作が発生すると、父はその場から動くことができず、心房頻拍が治まるまで5分程度その場から動く事が出来なくなってしまう。不整脈はルクラからロブチェベースキャンプまでのキャラバンの最中、頻繁に記録されていた。
こうした不整脈の発作は高度な登攀技術を要するロブチェイースト峯において危険を伴い、継続的な不整脈の発作が続いたため、このまま高所でのトレーニングは困難と判断、最高到達点をロブチェイースト、ハイキャンプ(5300m)として10月30日に下山活動を開始した。
幸いなことに、今回は国際山岳医であり、循環器内科専門である大城和恵先生が心電計、心拍計を用いて詳細に記録をとり、その状況を把握、心房頻拍の治療についても前向きで具体的な治療法を頂いた。これらは日本に帰国後、専門的な治療により十分完治するものであるという事だ。そのため日程を早め日本に帰国することにした。
今回の遠征の最重要課題は三浦雄一郎、80歳のコンディションを知ることである。そういった意味では今のタイミングで問題が明確になり、十分に来年のエベレスト本番まで時間があり対応が可能であるという事は不幸中の幸いだともいえる。
三浦雄一郎本人も治療に前向きに取り組む意思がある。さらに今回ロブチェイースト峯の登頂には至らなかったが、中止を決めた直後、来年のエベレストに向け、もしネパール側に登山活動が移った際の高度順化計画について斬新な行動予定を発案した。
それはロブチェの対岸にある山、コンマラ峠とその峰にあるポカルデ山に横たわる氷河で高度順化を兼ねてスキーを行なうというものだ。
4日前、コンマラをディンボチェからアプローチした時、氷河や雪は見受けられなかったがそれは南側からアプローチしたためであった。
今回のロブチェイーストを断念した理由のもう一つは、ポカルデ山に横たわる氷河があまりにもスキーには魅力的であり、現在の三浦雄一郎の状態で危険を伴うロブチェイーストを登るよりも、来年のエベレストの楽しい高度順化のためのリサーチをしたほうが有益だと考えた。
そのため、明日は2グループに分け、三浦雄一郎、大城先生、貫田さんは直接ディンボチェに向かい、五十嵐さん、三戸呂君、僕とで再度、コンマラに登りディンボチェに抜ける事になった。
三浦校長を囲んで・・・!
五十嵐和哉さん、三浦校長、三浦豪太さん
三浦校長の不整脈が記録されたため、今回のトレーニング遠征は予定より少し早く終了することになりました。
しかし、来年のエベレスト挑戦のための新たな目標や課題が見つかったということで、三浦校長のどこまでも諦めず、前向きな姿に改めて心を打たれました。
校長が無事に治療を終えられ、来年のエベレストに挑戦できるように願っています。
0 件のコメント:
コメントを投稿