10月21日 14:30~17:00 ナムチェ高度順化
《三浦豪太さん遠征日記より》
父の歯がいよいよ深刻な状態になった。
歯が痛くて集中もできず、食事もろくにできない。
昨日のうちにチミに連絡して歯医者の予約を朝の10時とってもらった。
ナムチェにある歯医者についてみんな興味津々、お父さんの後ろを大名行列のように、全員でゾロゾロついていく。
クリニックの名前は「Namche Dental Clinic」。そこにはシェルパの女性、ナワン・ドカ・シェルパが常駐歯科医としていた。彼女はカナダでデンタルセラピストの勉強をして、 1991年にナムチェで開業した。これ以前は歯医者はいなく、カトマンズのような大きな町に出るか、ひたすら我慢するしかなかったという。
クリニックはアメリカンヒマラヤン基金の寄付、地元民のサポート、そして海外からのトレッカーや登山者の寄付金によって成り立っている。
普段僕達が日本で目にするような歯科医院ではないが、小さいながらも十分に器具と薬は揃っているように見える。
ぞろぞろのなんとかのフンみたいに父のあとをついて行った僕達をナワンは快く迎え、治療の見学をすることを許可してくれた。
彼女は父の口の中をみると早口でまくしたてた。
「これは大変、歯がぐらぐらして、瘍膿もかなり激しいわ、これは抜くしかないわ」と
父もこれほど痛いのなら、80歳まで頑張っていた歯ではあるが抜いて欲しいという事で
麻酔を注射、あっという間に抜歯。
彼女の麻酔も抜歯の手際も見事でさすがカナダ仕込みの歯医者だった。
これから心配なのは抜いたところが化膿することなので、抗生物質を5日間服用と少なくとももう一日安静を命じられた。
幸い、山岳医の大城先生も同行しているので、抗生物質は十分にあるし、化膿の兆候が出たらすぐにわかる。
明日はクンデに向かう予定であったが、クンデはそれほどここから遠くない。明日は一日休養を兼ねた様子みとして、明後日からクンデを飛ばして次のポルツェに向かうことにプランを変更した。
夕方、お父さんは安静だが、僕達はシャンボチェのピンゾーさんの所に高度順化を兼ねていってみた。ピンゾーさんは父がエベレストを滑走した40年前からの知り合いで家族ともども親交が深い。
ピンゾーさんが住む、シャンボチェは小型機が着陸可能な滑走路を持つ飛行場だが、飛行機会社が採算が取れないという事で定期便を今年の春を最後にやめてしまい滑走路には草が生えていた。
ピンゾーさんは定期便が来るときは飛行場のオペレーターをしていたがいまでは時々来るチャーターヘリを誘導する程度だ。
しかし、ただでは転ばないのがピンゾー一家。息子のチミとこの近辺に沸くミネラルウォーターを入れるペットボトルを作ることを考え、中国からペットボトルを作る機械を仕入れた。
これまでは空のペットボトルをカトマンズから持ってきたが、ペットボトルは軽い割にかさばり、輸送する数に限りがあった。しかし、地元でペットボトルを作ることができれば材料はそれほどかさばらず、大量に作ることができる。
なかなか面白い着眼点だとおもった。
明日はお父さんも歯の痛みも治るだろう、翌日の再会を誓いナムチェに戻る。
抜歯中の三浦校長
ピンゾー一家と豪太さん
日本から遠く離れた国の標高の高い山に住んでいる家族と深い親交があるなんて、さすが校長ですね!
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